[DE |
EN |
FR |
IT |
JA |
ES |
KO |
PT]
Brave GNU Worldの新しい号へようこそ。 前回は創造的なヒマつぶしの方法にやや集中したので、 今回はどちらかというと仕事に関係した面を論じたいと思います。
Brave GNU Worldのロゴの作者、 Stefan Kamphausenが、 彼の同僚のRüdiger Götzによるグループウェアのことを私に教えてくれました。 このプログラムでカレンダー、 住所録、 業務管理、 そしてそれゆえ、 部屋 (space) や時間が、 管理できます。 「物理学者ら (Physicists)」のユーモアにしたがって、 特殊相対性理論で使われるミンコフスキー図から、 この「時空 ("space-time")」管理プログラムは、 Minkowsky [5] といいます。
このプログラムは、 Stefanと、 Rüdigerの働いていた会社が、 グループウェアの解をさがしていた2000年の末に、 さかのぼります。 代替のOutlookに対抗し、 RüdigerはMinkowskyの作成を決意し、 その会社では2001年2月から首尾よく使っています。
秘書や関連部署の同僚などがアポにアクセスする可能性をあたえるため、 Minkowskyでは適度なアクセス権の管理を考慮に入れています。
Stefanと、 Rüdigerの経験によれば、 Minkowskyを特長づけているのは、 特に部内の意思疎通や調整の向上にあるとのこと。 Minkowskyでは、 タスクは、 単一のLAN上にいる仲間にほぼ適応しています。
Minkowskyの技術的基盤は、 C++/CとTcl/Tk/Tixであり、 またデータベースは予備になっているので、 状況においてはそれが利点になりえます。 MinkowskyはGNU General Public Licenseの下のFree Softwareであることから、 多少重要な分野においてこれを使う会社の独自性も安全に確保します。
2001年5月の公開リリースにしたがい、 英語でも初版のリリース過程が公表されつつあります。
クライアント/サーバー間通信の安定化、 PDAとの同期、 Mac OS Xへの移植 (MinkowskyはGNU/Linuxで開発されました)、 そしてもちろんバグの発見と訂正が、 今後の予定にあります。
特に英語の翻訳だと、 より安定した通信層とPalmハンドヘルドとの同期が、 Rüdigerの援助を歓迎している分野です。
Webminstats [6] は、 ウェブ・ブラウザで関連する多重システムの状態 (parameter) を監視できるようにするものです。 ブラウザはたいてい、 すべてのプラットホームで入手可能なので、 こういったプロジェクトは、 (異機種間の) ネットワーク管理者にかなり人気があります。
David Bouiusは、 2001年8月にWebminstatsへの取組みを開始しました。 2001年末までにはEric Gerbierから支援を受け始め、 管理し続ける時間がDavidに足りなくなったとき、 DavidはEricにプロジェクトを引き継ぎました。
Brave GNU Worldのアンケートに答えてくれたEric Gerbierによれば、 同様なプロジェクトにくらべて、 Webminにはいくつかの長所があります。 たとえば、 このジャンルで古参のMRTG [7] よりもかなり高速です。 というのも、 Webminstatsと違い、 MRTGだと、 当面は不要なグラフまで作成してしまうためです。
その名前からお察しのとおり、 Webminstatsは、 Unixシステムをウェブベースで管理できるWebmin [8] プロジェクトを基にしています。 そのため、 Webminのアクセス制御機能をWebminstatsと共有や、 ブラウザでの設定も可能になります。
Webminstatsのバックエンドは、 Tobi OetkerによるRRDTool (Round Robin Database Tool) [9] で、 これは、 前述のMRTGプロジェクトの表示能力や記憶域を、 さらに柔軟に再実装したものです。 フロントエンド機能やデータ収集の提供はしないため、 RRDToolはMRTGの代用ではありません。 むしろ、 MRTGの使う基本データベースということです。
これらのデータベース能力は、 Webminstatsの使うものでもあります。 Webminstatsは、 データ収集用に、 9つのモジュールを提供します。 これは、 1分単位での利用者数、 CPU負荷、 ディスク空間、 IRQ、 インターネット (FTP/HTTP)、 メール (sendmail, pop, imap)、 メモリー、 プロセスを監視します。
Ericが自分のウェブ・サーバーの問題をこれによって見つけて直すことができたのは、 つい最近のことでした。 クラッシュの正確な時刻と、 クラッシュ直前のログイン情報を提供する利用者モジュールで、 可能性のある問題をしぼり込むことができ、 具体的なバグを見つけるのがかなり簡単になりました。
WebminstatsはPerlとBashシェルで書いてあり、 GNU General Public Licenseの下で、 Free Softwareとしてリリースされています。 英語、 ドイツ語、 スペイン語が利用可能で、 間もなくフランス語もサポートされる見込みです。
また、 ファイアウォール監視能力により、 機能が新しいモジュールで拡張され、 他のUnixシステム用へのカスタム化の予定もあります。 その上に、 「アラーム・メッセージ」の追加も、 検討済みです。
新しい機能と同様に、 モジュール用の魅力的アイコン、 他の言語やOSへのカスタム化といったかたちでの手助けは、 特に歓迎です。
今年の年頭、 LinCompta [10] プロジェクトの作業開始により、 Pascal Conradは、 Free Softwareの最重要なギャップの1つ、 業務用分析経理 (Professional analytic accounting) を埋め始めました。
LinComptaプロジェクト上の独占的なPrologue (ママ) システムをPascalが選好するようになった理由であるGNU/Linuxや、 Free Softwareの利益にたいする評価や適切な理解を、 彼の最後の雇用先が示さなかったため、 彼は、 GNU General Public Licenseの条件下でコミュニティーに提供する決意をしました。
その履歴をかいつまんでも、 このプロジェクトは注目すべき進歩をとげています。 利用者のほとんどが理解しやすく、 しかもかなり使えるグラフィカル・ユーザー・インターフェースが、 すでにあります。
このプロジェクトで使われているプログラミング言語は、 GTK+/GNOMEサポートつきのCで、 PascalはMySQLをデータベースとして選択しました。
現在このプロジェクトでは、 データの印刷方法がなく、 現時点における言語支援が、 フランス語だけしかありません。 とはいえ、 課題一覧のトップには、 英語やロシア語への翻訳があります。 特に英語版と、 ウェブ・ページは、 Pascalが手助けをさがしている分野です。
もしこのプロジェクトが、 十分に興味深いようであれば、 Pascalはこれを、 職業会計 (business accounting) の他の面に拡張する予定ですので、 もし皆さんがそんなプロジェクトを見てみたいのならば、 検査、 翻訳、 プログラミングによるPascalへの支援を検討すべきでしょう。
Brave GNU Worldの第6号 [11] では、 Ian ClarkeによるFreeNETプロジェクトの背景をお送りしました。 これは、 集中管理や検閲を不可能にし、 また、 データがネットワークを「さまよう ("wander")」ことを可能にする、 分散ネットワークの構築を目標にしたものです。
インターネットを検閲しようとする試みの増加と、 集中的参照点に依存するNapsterのようなファイル共有サービスの問題に直面し、 今日、 こういったピアツーピア・ネットワークの考えは、 ひろく知られるところです。
パーデュー大の学生らによるGNUnet [12] で、 今やこういったネットワークがGNU Projectの一部になりました。
このようなネットワークに接したことのない人たちのため、 少し説明させてください。 ふつうインターネットにおいて、 データは固定されており、 URLによりあるホストにひもづけされます。 これはつまり、 そのコンピュータへのアクセスを妨害することにより、 検閲や、 そのコンテントの提供者を見つけることが可能、 ということです。
これは、 中国のように、 政府の管理していないメディアへのアクセスが制限され、 批判的情報の提供者が制裁を覚悟しなければならないような国では、 特に問題です。
FreeNETやGNUnetのようなネットワークは、 暗号と匿名化の多用で提供者を守り、 不要な情報の物理的な局所化を不可能にして、 これをかいくぐります。 典型的には、 効率よりもプライバシーの方が重要なとき、 こういうネットワークが使われるものです。
ふつうの匿名ネットワークのほかにも、 GNUnetには統計の形態があり、 ネットワークにより多くを供給しているノードには、 多くの接続をまわせます。 排他的消費「フリーロード ("Freeloading")」が可能ですが、 そのためのどんな能力も「確保 ("left over")」しておく必要があります。
すでに述べたように、 GNUnetプロジェクトはパーデュー大から始まっていますが、 ここは、 一部の学生の暗号プロジェクトとして発足しました。 ところで、 最大の問題は、 このプロジェクトが暗号に関係のあるということを教授に納得させる、 ということでした。 ここまでのところ、 最初の御披露目は暗号コンファレンスでしたし、 GNUnetはβテスト段階ですから、 これはもはや問題ではないでしょう。
作者らは、 匿名化の中にGNUnetの特長がある、 と見ていて、 他のネットワークで採用されている手法よりもそちらの方がより効果的だ、 と信じています。 また、 ネットワーク内の悪漢からの保護をあたえる独自の 「評判係数 ("reputation metrik")」 に胸を張っています。 そして最後に、 GNUnetでは、 たとえばFreeNETなどで使われている乱数ハッシュ符号での検索ではなく、 「自然 ("natural")」な文字列での検索ができるのです。
作者らの知るかぎり、 GNUnetは、 そうした機能をあたえる唯一の完全な分散化ネットワークだとのこと。
このプロジェクトはCで書いてあり、 GNU General Public Licenseの下で公開されています。 最大の弱点は、 GUIをプログラムしようという熱意に欠けていることだ、 と作者らは見ています。 現在、 GTK+ベースのGUIはあるのですが、 とても使いでがあるという感じではまだありません。 ここへの手助けは非常に歓迎されるでしょうし、 またプロジェクトでは、 いまだにロゴをさがしています。
今後の開発は現在、 より多くのプラットホームへの移植に集中しています。 すでにGNU/LinuxとBSDではうごいており、 Solaris/OS10とWin32版の作業が完了しました。
将来の予定には、 UDP以外の伝送機構があります。 他でもない妨華壁 (the chinese wall) …じゃなかった、 防火壁を経由したネットワークへ画像に隠したデータを送るのに、 電子透かし (steganography) を使えるかどうか、 検討しました。 ファイル共有以外のネットワーク拡張―― たとえば、 電子メールの伝送―― というのも、 ありそうです。
訳注: ちなみに 大文字で``the Chinese Wall''と書くと、 「万里の長城」です。
GNUnetをうごかすノード、 Win32への移植援助、 文書化、 ウェブ・ページ、 グラフィックの作成などといったかたちでの援助を大歓迎します。
Gambas [13] とは、 "Gambas Almost Means BASic" (訳注:「Gambasは、ほぼBASicの意」) の略語です。 その名前が暗示するように、 Gambasは、 オブジェクト指向拡張つきのBASICインタープリタを基本とした、 グラフィカルな開発環境です。 このプロジェクトの作者、 Benoit Minisiniは、 JavaとVisual Basicから着想を得ました。
このプロジェクトの目的は、 浅い学習曲線で、 グラフィカルなプログラムを効果的にアセンブルできる環境の構築です。 Benoitにはこの課題が、 Visual Basicではバグだらけであり、 Javaでは複雑すぎることが、 わかりましたし、 それにVisual Basicは、 Microsoft Windowsでしかうごかないのです。 彼は、 許諾同様、 デスクトップの選択 (KDEやGNOME) に応じた自由を確実にしてくれるような、 そんな言語がほしい、 と思ってもいました。 したがって彼は、 GambasをGNU General Public Licenseの下で公開したのです。
このプロジェクトは、 3年間の開発を経、 インタープリタとコンパイラにはCを、 Qt呼出しにはC++を、 グラフィカル開発環境にはGambas自体を使っています。 Benoitはこの環境で、 最良の構文的一慣性と可能なかぎりの簡潔さをねらい、 Qt部分ぬきでおおよそ200kのインタープリタにしています。 これなら、 Gambasを埋込み環境に移植するのも、 比較的簡単でしょう。
モジュール式構造のおかげで、 現在採用しているQtベースのGUI部分は、 現在計画中のGTK+を基としたもので、 簡単に置き換えることができます。 その次の目標は、 良好なデバッガと、 データベース部分の作成です。
Gambasが真に完結したプログラミング言語/環境になるまでには、 きっともう少しかかるでしょうが、 手助けがあれば、 工程のスピード・アップも間違いなく可能なはずです。 Benoitに今、 本当に必要なのは、 彼にフィードバックをあたえるためにGambasを試してみようとする人びとです。
いったん構成部分のインターフェースがかたまれば、 Benoitは文書化もちゃんと予定しているので、 Gambas構成部分の追加は、 だれにでも簡単な仕事になるでしょう。
Brave GNU Worldのアンケートに答えてくれたとき、 Benoitは、 Brave GNU Worldの読者らとともにしたいという、 次の逸話を語ってくれました。
ある日、 Benoitは、 Windowsを再インストールしようとするため、 MS-DOS配下でパーティションを再フォーマットしようと決めました。 不幸にも、 WindowsとMS-DOSでドライブ文字が逆だったので、 別な ――もちろんバックアップをとってない方の―― ハード・ドライブを消してしまったのです。
不本意ながらも、 30GBの空きディスク空間を得てしまい、 彼は、 最近リリースされた、 別の独占的OSをいじくりまわすことができましたが、 彼のお気に召すものではありませんでした。 「また別のハード・ディスクのフォーマットでもしようかな」 などと彼は考えますが、 マウスをクリックすると、 今度はGNU/Linuxの"/home"パーティションが消えていました。
いうまでもなくGambasはそのパーティションにあって、 そして、 いうまでもなくバックアップはないのでした。
まったくの幸運で、 ひと月前のGambasのコピーが、 最初にフォーマットするはずであったあのWindowsパーティションにありました。 Benoirはたったひと月の作業を無駄にしただけで済んだわけです。
彼から全読者への忠告です。 大事なものは、 あらゆる場所に保管せよ! 猜疑的に。
バックアップの重要性は理論上、 確かにひろく知られているところではありますが、 このちょっとした体験談が、 一部の読者に、 ここ3年間の作業のバックアップをとらせるきっかけになるかもしれませんね。
もちろん、 単に独占的OSは避けるべきだ、 と思う方もいらっしゃるかとは思いますが。 :-)
Makeプログラム [15] の弱点は、 Brave GNU Worldの第37号 [14] ですでに説明済みですが、 今回は別の選択肢を紹介します。 Peter MillerによるCook [16] です。
第4号 [17] でお届けしたAegisプロジェクトの作者でもあるPeter Millerは、 すでに1988年からMakeの代用に取り組み始めていました。 プログラミング言語としてCを選び、 CookはGNU General Public Licenseの下、 Free Softwareとして公開されました。
MakeとくらべたCook (調理) の長所は、 並列ビルドの能力です。 調理方法 (recipe) には、 これをうごかすための具体的なマシンのホスト名、 依存関係自体をとおして解決可能な依存関係、 実行を調整するための予備の調理方法、 などなどがありえます。
Brave GNU WorldのGNU ConsとSConsの記事をお読みの皆さんは、 不要な再コンパイルを避けるため、 Cookが指紋の変更の検出をサポートしてもいることに、 興味があるかもしれません。
このプログラムは、 しっかりした、 経験ある利用者らにささえられ、 かなり成熟しています。 make2cookプログラムで変換も簡単ですが、 もちろんこれは、 新しいプログラムや新しい構文が不要になるわけではありません。
Makeからの出口を見つけられなかった人への、 もう1つのチャンスがこれです。
2002年4月30日、 FSF Europe [18] は、 第6次欧州共同体枠組制度 (European Community framework programme) への歓告を発行しました。 ここ数週、 このせいでFSF Europe代表として私は、 忙しくしていました。
強く、 いきいきしたFree Softwareの開発者、 利用者の、 ヨーロッパにおけるコミュニティーに立脚し、 FSF Europeは、 EUがこれに投資し、 第6次枠組制度のあらゆる面でFree Softwareの重視をし、 一部の分野で、 あからさまなFree Softwareの訴えを起すのがよかろう、 と提言しています。
この歓告の理由には、 公的基金の増加する持続可能性、 ヨーロッパにおける民主的伝統を安全確実にすること、 地域的、 地域間の市場の拡大、 アメリカの売り手寡占からの脱却、 ヨーロッパの学術研究の大幅強化、 などがあります。
そうした理由から、 FSF Europeの歓告は、 ヨーロッパ中の組織、 企業、 大学構成人 (universitarian structure) から支持されています。 支持母体一覧には、 Bull (フランス)、 the TZi of the University of Bremen (ドイツ)、 the Centro Tempo Reale (イタリア)、 MandrakeSoft (フランス)、 the FFS (オーストリア)、 Ingate Systems AB (スウェーデン)、 Eighth Layer Limited (イギリス) らが、 (他とともに) 掲載されています。
もしご興味があれば、 歓告全文と、 支持母体一覧が、 FSF Europeのホーム・ページ [19] にあります。
今月はこのへんで。 若干の衝動をあたえられたと期待しつつ、 いつものように、 たくさんのお考え、 ご提案、 コメント、 プロジェクトのご紹介をいつものアドレス [1] までお願いします。
GNUのホーム・ページにもどる。
FSFやGNUについてのお問合せ、 ご質問は、 (英語で) gnu@gnu.orgまで。他のご質問は、 (英語で) gnu@gnu.orgまで。
Copyright (C) 2001 Georg C. F. Greve日本語訳: 飯田義朗
Permission is granted to make and distribute verbatim copies of this transcript as long as the copyright and this permission notice appear.
(著作権と上の許可告知のある限り、 この写しの逐語的な複製をとって、 配布する許可を認めます。)Last modified: Wed May 1 17:21:33 CEST 2002